雨のお散歩
今
なんだか蒸し暑いので窓を開けたら、
ものすごいカエルの合唱が聞こえてきた。
あー
なんだか夏の夜みたい。
そして目を閉じてみると思い出される
ウブドの夜
蒸し暑い夜に
ものすごいスコールで
屋根にあたる雨の音があまりにもうるさくて目が覚めたあの夜。
重たい空気に身体中が圧迫されて
ビニールでおおわれたみたいな気持ちになった私は
大きな重い扉を開けて
ベランダへ出た。
外は雨が生き物みたいに植物に降り注ぎ
大きな葉をつけた植物たちはみんなシャワーを浴びるみたいに
気持ちよさそうにうごめいていた。
私はしばらくその雨をただただ見つめ
滝にうたれてるみたいに無心になった。
雨に打たれている植物たちは
こういう感覚なんだろうか、、、。
体中で自然のありのままを受け入れる彼らの生き方、存在感、
それはどんなに美しく着飾った娘たちよりも
どんなに英雄とたたえられられた人々よりも
謙虚でひた向きで勇ましく美しく感じられた。
たぶん、今 神様がいるな。
そんなことを思わせてくれるウブドの夜の雨の今ここに
私も生命体のひとつとして一緒にいられることが
なんだかとても嬉しくて、
私は絵を描いた。
その絵は雨にはじかれて
人魚の涙みたいに にじんでいった。
そのうち寝ていた友人の月子が
寝ぼけた顔をしてメガネをかけて起きてきて
何も言わずに座った。
彼女もただただ滝に打たれるみたいに
その雨をずっと見つめていた
猫が来た。
その猫も にゃあとも鳴かずに
ただただ月子のひざの上で丸まって
雨を眺めていた。
雨が降ると
どうしたって私はウブドに行ってしまう。
だからお香が炊きたくなる。
ガムランの音が どこからか聞こえてくる。
ナシゴレンのにおい
バリコーヒーと甘いお砂糖にあつまる大きな蟻
夜になるとピンク色の花びらを毛布にするあの精霊たち
夕方
雨が降ってきた。
窓からそれを眺めていた娘は
突然靴を履いて外へ飛び出した
雨だから 外へ行きたくない私
雨だから 外へ行きたい娘
「ママ おいで ~!!」
雨の中
娘からそんなお誘いを受けたら
嫌だとは言えない私
傘をさして
向かう先は やっぱり近所の神社
雨の中の神社はとてもいい香りがした。
雨に濡れた女子中学生が
ちゃんとお参りしてるうしろ姿が印象的だった。
ふたりで手を合わせて
雨宿り
あまり普段しゃべらない私だけど
「 雨、いいね。雨ってさ 。あのね 、、、雨ってね 」
と、雨について娘に色々語ってしまった。
娘は
「あめ あめ 」 となんどもつぶやきながら
空を眺めていた。
雨 きもちいいね。
うん。
いい音だ。
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