インドのジプシー的旅日記、第三夜目。
予想外に結構いろんな方が楽しみにしてくださって、なんだか嬉しいけれど気恥ずかしい。
さあさあ今夜も
ちょこっとスパイシーなジプシーの旅をお楽しみください。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
目を閉じる。
地球を一周まるごと旅する 大きな風の音色を感じる。
じりじりと、肌の細胞にまで届く 太陽の恵みを一粒一粒。
光のはじっこが 七色になっていくのが見える
追いかけても 追いかけても つかめない その尾っぽを優しく抱きしめて
水をすくうように、自分の手に光を宿し
彼女の身体にそっと手を当てる。
サンギータの身体は、あのしなやかな踊りとは逆に、意外なほど固かった。
その固さは、大地に根を張る木の幹に少し似ていた。
幼いころから、ずっと彼女は踊り続けてきた。
このカラカラに乾いた砂漠の大地と、永遠の彼方に鳴り響く太鼓の鼓動と
受け継がれてきた伝統と共に、彼女の身体はたくましく出来上がっていた。
私はふと、レゲエダンサーの身体を思い出した。
彼女たちの鍛え上げたれたあの身体。
彼女は露出はしないけれど、それと似たようなしっかりした筋肉が付いてた。
サンギータの子供が、お父さんに抱っこされながら、じっと私たちを見つめていた。
異国の地から突然やってきた怪しげなジャパニーズを、彼らはどう思っていたんだろう。
彼らの歴史ある舞台に、踊りやら歌やらで突然参加してしまった私たち。
そしていつの間にかキャラバンの一員にさせてもらっている。
彼らは誇りを持って、ひとつひとつのステージを
ラジャスターンの音楽家、プロフェッショナルとして演奏しているはずだ。
彼女だってそうだ。
家族代々ダンサーという血筋のなか、ずっと踊りを踊ってきて、
突然私のような人間が飛び入りでこのキャラバンに入ってしまったことを
どう感じていたんだろう。
でもね、サンギータ。
私は私なりの表現方法で、みんなを楽しませていたつもり。
なぜかキャラバンに参加してるジャパニーズミュージシャンを
観客たちもとても面白がってくれた。特にダンスが好評だった。
彼らの砂漠の夜を鼓動に変えてしまうあのリズムに、
私はシャーマニックになり、我を忘れて火の粉のように踊り狂った。
その火の粉のような踊りがなんだかウケて、
私はまたまたチップを沢山もらってしまった。
でも、このチップがあとあとこのキャラバンでの生活に歪が生まれてしまうのだけど、、、。
私は彼女が夜のステージで、煌びやかに観客にむけて踊る姿と、
しかしステージから帰ってくるといつも腰に手を当てて
ここが痛いの。と私の手を取り訴えてきた姿がとても愛おしくて
彼女のいろんな面がどんどん好きになっていった。
男だらけのキャラバンで、唯一の花形のサンギータに、
私はいつだって夢中だった。
それは少しだけ、恋の味に似ていた気がする。
たぶん、わたしは彼女の何かにとても惹かれていたんだけど、
それはずっとジプシーという生き方に恋焦がれてきた私の何かが
そうさせていたのかもしれない。
つづく