旅とマッサージ 7

カミュ

2012年10月27日 22:18

今日は長野駅でハロウィンの衣装を来た子供たちを

沢山見ました。

みんなとってもかわいかった。

なんだかおとぎの国に降り立ったみたいな気分になりました。

私は娘に何もしてあげていないことに気が付きました。

手作りのお菓子なんて作ってもないし、

仕事でいつものように保育園に預けてしまった、、、。

ちょっと申し訳ない気持ちになったので、絵本をプレゼントに買って帰りました。

物で解決するのは良くないけれど、絵本は別。

二人の時間を過ごせるから。

ムーミン谷の絵本です。


冬になると南の国へ行ってしまうスナフキンに対し、

どうしても寂しい気持ちが抑えきれないムーミンのお話。

とっても素敵です。

平安堂で一番初めに目にとまった絵本がこれでした。

直観冴えてて良かった。

娘は保育園で近所のスーパーでやっていたお祭りに連れて行ってもらったらしく、

獅子舞が見れて良かった!ととっても喜んでいました。

彼女は獅子舞が大好きで、いろんな国の獅子舞の動画をいつも見ているのです。

「ままみて。ししまいのまね」

と言って、腰をおとし、口を大きく開けて獅子舞の踊りをまねしてくれました。

その姿といったら!! 先生と私で大うけ!!



ハロウィンはまったく触れていなかったけれど、なんだか彼女にとっていい日でよかった。

そうだった。毎日がスペシャル。太陽に感謝。


さてさて、今夜で第7夜となる連続ジプシー小説。

みんなそろそろ飽きてきたころなんじゃ、、、。 

と思いつつ、私は書きたいことが山盛り。

そろそろ完結したいところですが、どうなるかな?


読んでみての感想などあれば、

みなさんぜひお気軽にコメントを残してもらえたらと思います。


はじまり 


     はじまり


☆  ☆  ☆  ☆  ☆







少し高めのレストランでおなか一杯パスタを食べた後、

フルーツシェイクを飲んで、私はなんだか生き返るような気持ちになっていた。

お腹が満たされると、気持ちも緩んで

砂漠でずっと険悪だった彼との関係も少し丸くなていった。

私たちは旅の中でずっとエキサイティングしていて、でもどこか不安も拭いきれず

緊張感もたぶん続いていて、でも、疲れた。と言えないでいたのかもしれない。


砂漠に本当に戻るのか、、、

今なら帰らない選択も出来た。

手元に荷物はすべてあるし。


ジプシーたちとの生活に戻らずに、街で気ままに観光したっていい。

そうだよ。私たちは自由気ままな旅人なんだから。


ずっと砂漠で少人数になれていたせいもあって、

街のにぎわいは少しめまいがした。

人々が暮らす街にはモノが溢れ、言葉が溢れ、牛が歩き、人がそこを縫うように歩き

どこからともなくいい匂いがして、誘惑が沢山あった。

ここが実は砂漠の中の都市であることなんて忘れてしまうくらい

ここにはすべてがそろっている。


フルーツシェイクが終わるころ、私は最後にあったかいチャイを一杯頼んだ。

どう考えても食べ過ぎ飲みすぎなんだけど、

我慢していたものが溢れだすみたいに、

そしてまた砂漠に戻るなら蓄えておかなくちゃ。のようなそんな気持ちからだった。


そしてチャイに口をつけたその瞬間、

レストランの入り口から声がした。

「Hey kamyu !」

見覚えのある太い声。

ここで私の名前を知っているなんて彼らだけだ。


白い服を着た、ジプシーの仲間たち。



みつかっちったか。

買い出しに来ていた彼らだった。


嬉しいような、もう少しのんびりチャイタイムを味わいたかったような、、、

少しめんどくさいような、、、


いろんな気持ちが入り混じって、思わず微妙な表情になってしまった。


「そろそろテントに戻ろうと思うけど、車に乗っていくか?」

彼らは沢山の買い出しを表の車に積み込んでいた。

とても私たちが乗れそうなスペースはない、、、。


「ありがとう。私たちは夕方のバスで戻るよ。」

そう伝えると、OKと私たちの肩をたたき、持前のパワフルな笑顔で去っていった。

なんだかとてもあっけなく立ち去っていった彼らの後ろ姿が

なんとなく寂しそうに見えて、私はもしかしたら自分の微妙な顔が

彼らを傷つけてしまったのではないかと一瞬不安になった。

でも、この大きな街で

自分のことを知ってる仲間がいることに、私はとても嬉しくなった。



「こんなところでばったり会うなんて、よっぽど縁があるんだなー、、、」


なんだか可笑しくなってきて、私はにやにやしながらチャイを飲み干した。

やっぱり戻ろう。

なんだか恋しいじゃない。キャラバンに戻ろう。

サンギータが待ってる。

彼らとまた、演奏したい。


私たちはマンダリンとドライフルーツとバナナを沢山買って、

砂漠のキャラバンに戻るバスの時間をチェックしに行った。


すると、ひとりの若い男が私たちを見つけて歩み寄ってきた。

何々?!何ナノ?

インド人が寄ってくるとき、だいたいしつこい商売が始まることが多かった経験がある私は

思わず距離をとってしまった。

「ちがうちがう。俺はただ君たちと話がしたいんだよ。」

彼は慌てて手を大きく広げてそんなことを言った。

インド人お決まりの七三分けに髭の姿の彼は、ちょっとこぎれいな恰好をした20代後半くらいの細見の男性だった。


「 じゃあ何?」


マンドリンが沢山はいった薄いビニール袋が重たくてやぶれそうになって

私は胸に抱きかかえながら言った。


「君、あそこのキャラバンにいるんだよな?」


「Yes, but why ? 」


やばい、なんか警察の人とかだったらやだな、、、。とちょっと不安がよぎる。


「サンギータを知ってるか?ダンサーの」


急に何かを訴えるような目に変わった彼の言葉に、私は返事に困ってしまった。

知ってるけど、何か怪しい人だったらどうしよう。



「、、、 ?」


私はさあ、という顔をしてみせた。



すると彼は思いがけないことを話し出した。



「伝えて欲しいことがあるんだ。 実は彼女は僕の恋人だったんだ。

 だけど彼女は違う親の選んだ男と結婚させられてしまって、子供まで出来て、、、

 でも僕は彼女のことが忘れられないんだ。」


急に彼は私の腕をつかんだ。


私の頭の中は 大きな はてな が浮いていた。



え?



あの日、

砂漠で彼女をマッサージしたときのことが ふいに目の前にフラッシュバックした。

サンギータの昼間の母の顔、 こどものはしゃぐ声、旦那さんの子守をする姿、、、







クラクションが鳴った。

バスが来たのだ。



私はそのバスを眺めながら、もう行かなくちゃと思った。

このバスに乗って、はやくサンギータの元に帰って

また今夜もみんなとファイヤーのまわりで音楽を、、、



私は彼から、聞いてはいけないことを聞いている気がした。



そして次の瞬間、



彼は突然私を抱きしめた。



「こうやって抱きしめて、彼女にまだ愛してるって伝えて欲しい。」




え???


私は頭が真っ白になった。

耳元でささやかれたその言葉を、私はいったいどこに流していいのか

さっぱり分からなかった。


彼は私をやさしく放すと、私の泳いだ目をまじまじ見つめた。


私は一呼吸おいてから、

「メーラー、、、ナーム?」

と、なぜかヒンディ語で彼の名前を聞いていた。




彼は力強く名前を二度も伝えてくれたけれど、

私はまったく覚えられなかった。



バスに乗りかけた私に、背後からその男が

「頼むぞ!!」 と何度も声を張り上げた。




ラジャスタニーたちで満員のバスに揺られながら、私はサンギータのことばかり考えていた。

隣に乗っていた女性が手ににわとりを抱きかかえていた。

そんな光景にももう慣れっこで驚きもしなかった。


それよりも、もっと もっと

私の胸ははち切れそうなほど、彼女のことで一杯になっていた。






つづく













































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