2012年10月21日
旅とマッサージ
旅の間、私はいろんな人をマッサージする機会に恵まれた。
思い出に残る、マッサージの一つに
インドのラジャスターン地域、ジャイサルメールの砂漠のダンサーへのマッサージがある。
彼女の名はサンギータと言った。
以前にもサンギータのことは書いてるけれど、
私は年に一度ジャイサルメールで行われる 砂漠の満月祭で、
数百人の煌びやかなインド人アーティストの中から彼女を見つけた。
真っ黒い闇のような衣装を身にまとい
月のように踊る彼女の美しさに目を奪われ、
酔いしれるように彼女を見つめていたあの満月の夜。
ラクダは螺旋を描く夜の華々しい砂漠に、昔見た影絵の絵本のように存在していた。
大きなインド中から、世界中から数千人もの人が集まるこの砂漠の満月祭が終わった後、
私はどこからともなく聞こえる太鼓の音を求めて
あるキャラバンのテントへと吸い込まれていった。
そこには鼻の下にひげを生やし、ターバンを巻いたインド人のジプシーたちが
空間と人と天と大地を縫うような、なまめかしい音色と
思わず人を踊らせてしまう激しい太鼓で音楽を奏でていた。
ファイヤーが真ん中に燃え、その向こうには観客たちの姿。
そしてそこに踊り子が登場。
あれ?
満月の光の下で踊っていたのは、さっき見た月の女神様のような彼女だった。
彼女はとても美しく、煌びやかに、しかしどこか切なそうに踊った。
その踊りはショーであって、私が自由に踊る部類のものではなく、
彼女は受け継がれてきた伝統を守り、観客を喜ばせるために踊っているということに
その時気が付いた。
一緒に歌いたい。 という私たちの申し出を快く受け入れてくれたそのキャラバンのステージに
参加させてもらい、私たちは歌った。
そしてその夜、砂漠の月夜を満喫したいと想い野宿しようと思っていた私たちに、
あるライブを見ていた観客のインド人のおじ様が声をかけてくれ
「お願いだからテントで寝てくれ。宿泊費は払ってあげるから。」
というなんとも夢のような?!いや、何か裏があるのでは?と
思うような一声により、私たちは何度も御断りしたのだが、
おじ様の熱意に負けてありがたくテントでの宿泊を無料でさせてもらうことになった。
(この集合テントは、砂漠を観光に訪れたゲストが宿泊する、砂漠の高級宿泊施設 テントだけど)
私たちが住む場所として与えられた豪華なテントの中には
トイレやバスまでついていて、中には大きなダブルベッドが。
旅の疲れと、満月の夜が結んだ新たな出逢いに興奮と
いささか不安もありながら、小さくなって眠った。
ペッドボトルのミネラルウォーターが終わらないうちに、町へ帰らないと、、、。
そんな不安ばかりが頭にへばりついていた。
太陽が砂漠を照らし、
私たちが住む真っ白なテントにまぶしく反射しはじめた頃、
目の前にいる黄色いサリーを着ている女性が
月の女神であることにすぐには気が付かないでいた。
私は彼女の名前を聞いた。
「サンギータ」
それ以外、私たちは会話を交わさなかった。
なぜなら、彼女は英語がまったく話せなかったし、私は彼女の使う言葉の意味を
感覚でしか理解できなかったからだ。
彼女は豪華な宿泊テントの奥まったところに、
本当に小さなテントで家族四人で暮らしていた。
小さな子どもの影も見えた。
なんだかそこへ近づいてはいけない気がして、
私は彼女がそこへ帰っていく姿を、そっと見つめていた。
そして私たちは昨日のジプシーの音楽家たちに呼ばれ
昼間から酔っぱらいのキャラバンたちと音楽を奏であい、
いつの間にか意気投合して、
「ここでショーを一緒にやろう!住む場所と飯代はただだ!」
と、キャラバンの一員として
しばらくそこに滞在することになったのだった。
インド人は、お酒飲まないんじゃなかったっけ、、、?
いささか不安もありつつ、
でも彼らの笑顔と、音楽を楽しむ陽気さに心を開らかずにはいられなかった。
つづく
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Posted by カミュ at 21:26│Comments(0)
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