2012年10月26日
旅とマッサージ 6
旅日記を読んでくださってる方から
たまに言われることがある。
「 よく事細かに覚えてるね~ 」 と。
私は日常を文章にして実は記憶している。なんてかっこいいこと言っちゃったりして。
それは半分本当で半分うそ。
私は旅の中で撮った写真からインスピレーションワークをしたり、
日記を読み返してみて思い出したことをその時の感覚で書き直したり、
実はこのインドの半年の旅は2009年の出来事なので
本当に自分がわくわくしたことや、どきっとしたことや、感動したこと以外は
忘れてしまってることもある。
でも、寝かせたからこそ、分かった感覚もあったりして。
この旅ではずっとビデオを持ち歩き、ライブやここに書いている砂漠でのジプシーとの生活なども
撮ったりしていたので、いずれそれはそれで作品に出来たらと思ってるけど
思ったまま三年の月日がたってしまった。
映画監督まではいかなくても、この映像たちを編集して
ライブパフォーマンスと文章と映像を何かしら繋げた何かを作りたいと思っている。
そういう時間がたまらなく楽しいから、あんまりすぐにやりたくない自分もいる。
ちょっとずつ、蓋をあけていこう。
まずは、ずっと書きたかったことが連続小説のようにここで続いているので、
そちらを十分に私は楽しみたいと思います。
こちらもいつか本にしたいなーと思うので、
今回ここに書くのは、ラジャスターン編で終わりにしようかなと思います。

☆ ☆ ☆ ☆

ある日、私たちはジャイサルメールという街に、
自分たちの預けてあったバックパックを取りに帰ることにした。
砂漠の満月祭に一泊だけのつもりで、ローカルバスに乗って砂漠までやってきた私たちが
持っていたものは、砂漠で野宿をしようと思って買った毛布ふたつと、
もしもの時ようの非常食として用意したデーツ、バナナ、ミネラルウォーター二本と、
私の秘薬 干し梅と、ビデオカメラと貴重なテープ、貴重品だけだった。

あとのバックパックは、すべて泊まっていた宿の倉庫に預かってもらっていた。
本当にこのゲストハウスおっちゃんに預けて大丈夫だろうか、、、。
と何度も不安に駆られたけれど、彼とジャンケンしてみたら
彼が勝ったので、ここはひとつ信じてみよう。と決めて、
最悪取られても仕方ないか、と思えるものだけ置いていくことにした。
その荷物たちを、そろそろ取りに帰ろう。
そしてこの砂漠に持って来よう。と私たちは決めた。
このまま帰っても良かったんだろうけれど、
街よりも、砂漠と月と音楽を選んだ。
ジプシーたちと毎晩生演奏している
タール砂漠のリゾートテント村から バスで一時間半で帰れるジャイサルメールは、
砂漠のど真ん中の大都市。
宮崎映画のモデルになってもおかしくないような、土で作られた赤茶色の壁の
とても古く美しい街だ。お城もある。

マハラジャ と言う言葉も、この街から生まれたんじゃなかったかな?
ジャイサルメールの女性達は、とても華やかだ。
ラジャスタニードレスという、サリーとは少し違うドレスをまとっているのだけど、
とにかく色のセンスが明るく絶妙。
砂漠にショッキングピンクのラジャスタニードレスは
野に咲く花のように、本当に儚く力強かった。

そして目鼻立ちが整った、美男美女が多い。
お城が登場する絵本の物語そのものの世界に、足を踏み入れてしまったかのような気持ちにさせられる。
商売人は かなり気が強い。
私たちが初めてこの街に降り立ったときは特にひどかった。
砂漠の満月祭にむけて、町中の商売人が目を血眼にしていた。
ゲストハウスに行っても、キャメルサファリとセットでないと泊めないと追い払われたり、
しつこい商売の取引をせがまれたりした。
砂漠の特性がいい方に出るとああいう音楽を産みだすし、
乾いた方にいくと、人々をとてもドライに、そしてねちっこくするのだと感じた。
せっかくこんなにも美しい街なのに、、、ああ、インド、、、。
とため息が出てしまったけれど、砂漠に行ってここへ帰ってきてみると、
また違った角度からこの街が見えた。
砂漠のジプシーの何人かも、街に用事があるらしく、
彼らはオーナーの車で一緒に乗せていくよと申し出てくれたのだが、
私たちは正直毎日一緒の生活で若干人疲れも出てきていたので
それは断ってローカルバスで帰ることにした。
私は腹ペコだった。
毎日砂漠を見つめ、歌い踊り、マッサージをして
観光客用に作られたカレーの残りと
少し硬いチャパティの毎日に、正直ちょっとうんざりし始めていた。
ありがたい。たしかにありがたいんだけど、
乾燥した大地に私のドーシャは狂い始めていたようだ。
肌もカサカサ、着てる洋服も毎日ほぼ一緒。
汚れなんだか、砂なんだか、よく分からないものにまみれて、
髪の毛もゴアゴア。鏡なんてもうずっと見ていなかった。
そんな状態のどうしようもない私なのに、熱烈にアタックしてくる
ジプシーのおじちゃんもいたりして、
正直ちょっと面倒臭くもなっていた。
乾燥からなのか、何度も何度も瞬きをしてる自分。
痩せた身体。というか、やつれた?身体。
緑と街の温室育ちの中で生きてきた私の身体は、戸惑いながらも
今必死にここで生きようと、変化しているように感じた。
自分の中の野生が目覚めるとき、私はなんだかむずむずする。
脱皮でも始まるみたいに。
砂漠という場所は不思議だった。
森にいるとき、わたしは森と呼吸する。
木という存在、虫たち、生き物たち、土から、空気から
光を宿したミストに包まれ、呼吸する。
でも、砂漠はなんていうか、
自分がそうである気がする。
森のなかの木であるような、、、。
自然というひとつの生命であることを、強く感じるのだ。
そして砂は浄化する。
私を消し去ることだって出来るほどに。
浄化が始まったせいかのか、なんなのか
私は彼と沢山喧嘩した。
砂漠で大声を張り上げて、彼が砂漠に消えて行ってしまったこともあった。
そのうち帰ってくるだろうと思ってほっておいたけど、
夕日が沈むころになって無性に心配になった。
もう彼が帰らないんじゃないかと、黒い闇が私を襲い心底不安になった。
砂漠はもうすぐまっくらになる。
私は途中まで探しに行った。
砂がサンダルにうまってうまく走れなかった。
見渡す限りただの砂山で、
私はどうしていいか分からなかった。
しゃがみこんだ私の足元に寄ってきた一匹の虫。
地球がもし絶滅して、砂漠にひとり残されて
自分の一生をこの小さな虫と共に過ごすなら
私は君と一生友達でいたいと思った。
お願いだから、死なないで。と思った。
なんて私は自分勝手な人間なのかと、悲しくなって泣いた。
空はやっぱり今日も青かった。
彼は夜の約束のショーが始まる前に帰って来た。
太鼓の音を聞いて、その音を頼りに帰って来たんだろう。
バカ!!
心の中でそうつぶやいて、
私たちはまた激しく踊った。
太鼓は砂漠の鼓動のように
私たちを生かした。
胃の奥が痛い。
やっぱりスパイスの取りすぎだろうな、、、。
街について、私たちは荷物を預けている、なんだか無性に懐かしい
ゲストハウスの門をたたいた。
「ナマステ」
いたいた。
まだ12歳くらいの笑顔がやんちゃでかわいい少年。
彼がここのお手伝いだったから、私たちはこの宿に泊まることを決めたのだった。
身体が洗いたくてわざわざホットシャワー付きのゲストハウスを選んだのに、
泊まってみたらシャワーが途中で出なくなった。
ちょっと~!と文句を言いたかったけれど、この青年がせっせと
バケツに水を汲んで持ってきてくれたもんだから
何も言えなくなってしまった。
お湯入りのバケツで、私は小さくなって身体を洗った。
まだお湯なだけありがたい。
彼も久しぶりに表れた私たちを見て嬉しそうに笑い、オーナーを呼んでくれた。
インチキ臭いと思っていたオーナーだけど
それはどうやら思い違いだったようだ。
ほ。
預かってもらっていた代を渡し、彼らにサヨナラをした。
荷物は完璧に手元に戻ってきた。
よし。
さっそくカレー以外のものを食べにいこう!!
やっぱり禁欲的な生活をしていたせいか、
物欲や食欲、さまざまな欲が私の中から手を伸ばし始めた。
これが街というものか!
つづく
たまに言われることがある。
「 よく事細かに覚えてるね~ 」 と。
私は日常を文章にして実は記憶している。なんてかっこいいこと言っちゃったりして。
それは半分本当で半分うそ。
私は旅の中で撮った写真からインスピレーションワークをしたり、
日記を読み返してみて思い出したことをその時の感覚で書き直したり、
実はこのインドの半年の旅は2009年の出来事なので
本当に自分がわくわくしたことや、どきっとしたことや、感動したこと以外は
忘れてしまってることもある。
でも、寝かせたからこそ、分かった感覚もあったりして。
この旅ではずっとビデオを持ち歩き、ライブやここに書いている砂漠でのジプシーとの生活なども
撮ったりしていたので、いずれそれはそれで作品に出来たらと思ってるけど
思ったまま三年の月日がたってしまった。
映画監督まではいかなくても、この映像たちを編集して
ライブパフォーマンスと文章と映像を何かしら繋げた何かを作りたいと思っている。
そういう時間がたまらなく楽しいから、あんまりすぐにやりたくない自分もいる。
ちょっとずつ、蓋をあけていこう。
まずは、ずっと書きたかったことが連続小説のようにここで続いているので、
そちらを十分に私は楽しみたいと思います。
こちらもいつか本にしたいなーと思うので、
今回ここに書くのは、ラジャスターン編で終わりにしようかなと思います。
☆ ☆ ☆ ☆
ある日、私たちはジャイサルメールという街に、
自分たちの預けてあったバックパックを取りに帰ることにした。
砂漠の満月祭に一泊だけのつもりで、ローカルバスに乗って砂漠までやってきた私たちが
持っていたものは、砂漠で野宿をしようと思って買った毛布ふたつと、
もしもの時ようの非常食として用意したデーツ、バナナ、ミネラルウォーター二本と、
私の秘薬 干し梅と、ビデオカメラと貴重なテープ、貴重品だけだった。
あとのバックパックは、すべて泊まっていた宿の倉庫に預かってもらっていた。
本当にこのゲストハウスおっちゃんに預けて大丈夫だろうか、、、。
と何度も不安に駆られたけれど、彼とジャンケンしてみたら
彼が勝ったので、ここはひとつ信じてみよう。と決めて、
最悪取られても仕方ないか、と思えるものだけ置いていくことにした。
その荷物たちを、そろそろ取りに帰ろう。
そしてこの砂漠に持って来よう。と私たちは決めた。
このまま帰っても良かったんだろうけれど、
街よりも、砂漠と月と音楽を選んだ。
ジプシーたちと毎晩生演奏している
タール砂漠のリゾートテント村から バスで一時間半で帰れるジャイサルメールは、
砂漠のど真ん中の大都市。
宮崎映画のモデルになってもおかしくないような、土で作られた赤茶色の壁の
とても古く美しい街だ。お城もある。
マハラジャ と言う言葉も、この街から生まれたんじゃなかったかな?
ジャイサルメールの女性達は、とても華やかだ。
ラジャスタニードレスという、サリーとは少し違うドレスをまとっているのだけど、
とにかく色のセンスが明るく絶妙。
砂漠にショッキングピンクのラジャスタニードレスは
野に咲く花のように、本当に儚く力強かった。
そして目鼻立ちが整った、美男美女が多い。
お城が登場する絵本の物語そのものの世界に、足を踏み入れてしまったかのような気持ちにさせられる。
商売人は かなり気が強い。
私たちが初めてこの街に降り立ったときは特にひどかった。
砂漠の満月祭にむけて、町中の商売人が目を血眼にしていた。
ゲストハウスに行っても、キャメルサファリとセットでないと泊めないと追い払われたり、
しつこい商売の取引をせがまれたりした。
砂漠の特性がいい方に出るとああいう音楽を産みだすし、
乾いた方にいくと、人々をとてもドライに、そしてねちっこくするのだと感じた。
せっかくこんなにも美しい街なのに、、、ああ、インド、、、。
とため息が出てしまったけれど、砂漠に行ってここへ帰ってきてみると、
また違った角度からこの街が見えた。
砂漠のジプシーの何人かも、街に用事があるらしく、
彼らはオーナーの車で一緒に乗せていくよと申し出てくれたのだが、
私たちは正直毎日一緒の生活で若干人疲れも出てきていたので
それは断ってローカルバスで帰ることにした。
私は腹ペコだった。
毎日砂漠を見つめ、歌い踊り、マッサージをして
観光客用に作られたカレーの残りと
少し硬いチャパティの毎日に、正直ちょっとうんざりし始めていた。
ありがたい。たしかにありがたいんだけど、
乾燥した大地に私のドーシャは狂い始めていたようだ。
肌もカサカサ、着てる洋服も毎日ほぼ一緒。
汚れなんだか、砂なんだか、よく分からないものにまみれて、
髪の毛もゴアゴア。鏡なんてもうずっと見ていなかった。
そんな状態のどうしようもない私なのに、熱烈にアタックしてくる
ジプシーのおじちゃんもいたりして、
正直ちょっと面倒臭くもなっていた。
乾燥からなのか、何度も何度も瞬きをしてる自分。
痩せた身体。というか、やつれた?身体。
緑と街の温室育ちの中で生きてきた私の身体は、戸惑いながらも
今必死にここで生きようと、変化しているように感じた。
自分の中の野生が目覚めるとき、私はなんだかむずむずする。
脱皮でも始まるみたいに。
砂漠という場所は不思議だった。
森にいるとき、わたしは森と呼吸する。
木という存在、虫たち、生き物たち、土から、空気から
光を宿したミストに包まれ、呼吸する。
でも、砂漠はなんていうか、
自分がそうである気がする。
森のなかの木であるような、、、。
自然というひとつの生命であることを、強く感じるのだ。
そして砂は浄化する。
私を消し去ることだって出来るほどに。
浄化が始まったせいかのか、なんなのか
私は彼と沢山喧嘩した。
砂漠で大声を張り上げて、彼が砂漠に消えて行ってしまったこともあった。
そのうち帰ってくるだろうと思ってほっておいたけど、
夕日が沈むころになって無性に心配になった。
もう彼が帰らないんじゃないかと、黒い闇が私を襲い心底不安になった。
砂漠はもうすぐまっくらになる。
私は途中まで探しに行った。
砂がサンダルにうまってうまく走れなかった。
見渡す限りただの砂山で、
私はどうしていいか分からなかった。
しゃがみこんだ私の足元に寄ってきた一匹の虫。
地球がもし絶滅して、砂漠にひとり残されて
自分の一生をこの小さな虫と共に過ごすなら
私は君と一生友達でいたいと思った。
お願いだから、死なないで。と思った。
なんて私は自分勝手な人間なのかと、悲しくなって泣いた。
空はやっぱり今日も青かった。
彼は夜の約束のショーが始まる前に帰って来た。
太鼓の音を聞いて、その音を頼りに帰って来たんだろう。
バカ!!
心の中でそうつぶやいて、
私たちはまた激しく踊った。
太鼓は砂漠の鼓動のように
私たちを生かした。
胃の奥が痛い。
やっぱりスパイスの取りすぎだろうな、、、。
街について、私たちは荷物を預けている、なんだか無性に懐かしい
ゲストハウスの門をたたいた。
「ナマステ」
いたいた。
まだ12歳くらいの笑顔がやんちゃでかわいい少年。
彼がここのお手伝いだったから、私たちはこの宿に泊まることを決めたのだった。
身体が洗いたくてわざわざホットシャワー付きのゲストハウスを選んだのに、
泊まってみたらシャワーが途中で出なくなった。
ちょっと~!と文句を言いたかったけれど、この青年がせっせと
バケツに水を汲んで持ってきてくれたもんだから
何も言えなくなってしまった。
お湯入りのバケツで、私は小さくなって身体を洗った。
まだお湯なだけありがたい。
彼も久しぶりに表れた私たちを見て嬉しそうに笑い、オーナーを呼んでくれた。
インチキ臭いと思っていたオーナーだけど
それはどうやら思い違いだったようだ。
ほ。
預かってもらっていた代を渡し、彼らにサヨナラをした。
荷物は完璧に手元に戻ってきた。
よし。
さっそくカレー以外のものを食べにいこう!!
やっぱり禁欲的な生活をしていたせいか、
物欲や食欲、さまざまな欲が私の中から手を伸ばし始めた。
これが街というものか!
つづく
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Posted by カミュ at 22:39│Comments(0)
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