2012年10月29日

旅とマッサージ 8

おはようございます。

昨晩は九時にわたしも寝てしまいました。

起きたら三時半!

なんだか目が冴えちゃって、つづきを書き始めました。

朝って、なんかいいですね。

あ、新聞屋さんが来た。

いつもお世話になっている

アジアンナイトマーケットのねえさんが、タイに旅立つようです。

Hava a nice trip !!
 
タイもいいな~。

チェンマイから四時間ほどバスで山を登ったとこにある

娘が産まれたPAIに、そのうち帰りたいです。

でも今はインド!



それではスタート


☆  ☆  ☆  ☆  ☆






バスの中から眺める砂漠は、遠い記憶の果てにある映画のワンシーンの様だった。

その映画の中に自分が今いることが、

なんだかふいに不思議に思えた。


旅に出てしまうと、私は日本のことは滅多に思い出さない。

自分の過去、前世でも思い出すみたいに、それはとても遠い記憶となって

私をたまに刺激するくらいだ。


どうしてこんなことを突然思い出すのだろう。ということが

胸に浮かんでは、じわじわと心をしばらく支配して、

そのうちまた今いる風景の中に消えていってしまう。

小さいころの家族の思い出とか、

はじめての恋とか、

喧嘩別れしてしまったあの子との関係とか、

涙が突然溢れて、わけもなくわーっと泣いたりしちゃうようなこともあった。



小さなバスの窓から、流れてゆく砂漠を見つめていると、

そんな記憶のカケラたちがたまに顔を出しては、すーっと

砂の中に去って行った。




人間の人生はみんな、ひとり一人が主役であり、美しくて儚い映画のよう。


その映画は一体どこに記録されているのだろう。


私たちの脳みそ?

私たちの魂?

この大空の彼方に? 宇宙に?



サンギータの人生の映画に、私はどんな配役として出演しているんだろう。

私たちの人生の接点が、

彼女の中でいつか砂漠の砂煙と音楽と共に、消え去ってしまうかもしれないと思うと、

なんとも寂しい気がした。

私だって時が立てば忘れてしまうかもしれない。

でも、もしかしたら、90歳のおばあちゃんになっても、

私はインドの東の果てのこの砂漠で、

生命が開花するこのリズムと、宇宙を奏でるこの音楽と、

このキャラバンで過ごした日々を、サンギータを初めて見つけたあの満月のお祭りの夜を、



突然鮮明に思い出して、胸をはち切れそうなほどに熱くして

突然チャイを作って飲みたくなるかもしれない。

孫に、なんとなく、そんなジプシーとの思い出話を

面白おかしく、話し出したりするのかも、、、。



旅とマッサージ 8



隣に座ってる女性の黄色いラジャスタニードレスのショールが、風優しくなびいていた。

彼女はほほに手をあてて、気持ちよさそうに眠っていた。

その寝顔はとても穏やかで、私のはち切れそうな心を

少しだけ落ち着かせてくれた。


抱きしめたままだった、フルーツが入ったビニール袋から

すっぱいみかんの匂いがしてきた。

窓から入ってくる風で目も肌も乾いて、

私は眠ってる隣の彼女のように、ショールを顏に半分だけ覆った。

ピンク色のショールから透けて見える世界は、なんだかとても優しかった。

彼女の領域に少しお邪魔してるのかもしれないほどに。


ガタンガタンと揺れるバス、私を珍しそうに見つめるギラギラとした大きな目の男たちも、

ショールの内側から見れば、なんだか不思議と怖くなかった。


さっきの男に抱きしめられた感覚が、まだ身体に残っている。

私は今まで、自分のことを思って抱きしめられたことはあっても、

誰かの代わりに抱きしめられたことはなかった。

なのに私ったら、まるで自分に愛してるって言われたみたいに

ドキドキしちゃったりして。


しばらく風を浴びながらボー然としてると、だんだんそんな自分の勘違いに

怒りに似た感情が湧いてきた。


なんだかズルい。そんなの、自分で伝えればいいのに!!

こんなインドの東の果てまで来て、なんで私は伝書鳩の代わりになんなきゃいけないのさ!

そんな運命を変えちゃうようなこと、私に託さないでよ~。

神様の意地悪~!!



ビニール袋からみかんをひとつだして、私は爪をたてた。

大事な食糧。

でも、今食べないでいつ食べるの?


口いっぱいに広がるビタミンに、左の奥にずっと治らないでいる口内炎が染みた。

わたしは顏をすぼめて、

そんな顔が誰にも見られないように、更にショールで深く顏を覆った。



さてさて、、、

それにしてもどうしよう、、、。

中学生のとき、親友から好きな人を教えてもらって、絶対黙っててね。と言われ、

ドキドキしながら黙っていたあの感覚にちょっと似ていた。


バスに何度も手を振っていたあの男の熱い気持ちを思うと、

サンギータに今すぐにでも伝えなくちゃという気持ちに駆られたが、

でも、彼女はなんとなく今の夫と子供との幸せそうである暮らしを私は見ているので、

そんな過去の出来事をほじくりかすようなことが、果たしていいことなのかどうか、、、。

と思い始めていた。

でも、こんなばっちりな流れで私に彼はそのメッセージを私に託したってことを思うと、

やっぱりそういう流れなのかな、、、。と思ったり。



自分の好きでもない人と結婚をさせられて、一方で好きなひとを想い続けてるとしたら、

彼女は辛いだろうな、、、。






名前、、、。

彼の名前、、、  忘れちゃったよなー。


目が大きくて、ひげが生えてて、頭はこんなでって説明しても、、、

みんなそうじゃん!!インド人!!


あー!!! どうしよう。でもまてよ。サンギータは英語がまったく分からないし。

となると、どうやって伝えたらいいわけ?英語が分かるジプシーの誰かに手伝ってもらう?

でも、こんなシークレットなこと誰にも言えないよ、、、。

もしお母さんの耳に入ってしまったら、厄介なことになるだろうし。

もー、どうしよう、もうすぐ着いちゃうよ~!!



バスの道のりは長く、そしてあっという間に過ぎて、

ちょっと離れただけなのにもはや懐かしさがこみ上げる白いテント村に

バスは白いけむりを立てて到着した。



門のところで作業をしていたお手伝いの青年が、私たちを見つけて大きく手を振ってくれた。

「ただいま~!」

なんだか妙に愛おしくなってしまったこのテント村に無事到着。

ジャイサルメールの街であったジプシーの仲間たちとも無事再会。

彼らの車へのお誘いを断ってしまったことを、少し気にしてるかな?と思ったけれど、

彼らは今日も陽気で、訳もなく楽しそうだった。



旅とマッサージ 8


私たちは自分たちの大きな荷物を、与えてもらっている空き部屋の観光客用の宿泊テントに置いた。


荷物が遠い街に置き去りであることが気がかりだったので、

私はやっとこバックパックを連れて帰れてほっとした。



「あ、ごめん、さっきバスで一個みかん食べちゃったよ。」



私はフルーツをビニールから出しながら、彼に言った。

私たちはすべてのモノをお互いにシェアしあっていたので、食べ物も、水も

ピンチの時ほど喧嘩の種になりやすかった。

言わなきゃばれなかったかもしれないけど、みかんはあまり彼が好きなものではないから

私は正々堂々と自分のしたことを告げることが出来た。(笑)

もうこれ以上、わたしの心に隠し事は貯めておけれなかった。

彼は

「いいよ。みかんはカミュが食べて。僕はバナナがあればいいから」

と言ってくれて、私はほっとした。

これで手がみかん臭いことを後ろめたい気持ちで過ごさなくて済む。


さあさあ、サンギータだ。

サンギータはどこいるだろう?

自分のテントかな?

私は再びドキドキし始めた気持ちを抑えるように、自分の胸に手をあてた。



「ねえ、わたしさっき街であったこと、彼女に伝えるべきかな?」

私は自分の決断に自信がもてなくて、

一部始終をなんとなく見ていた彼に、聞いてみた。

「うーん、どうだろう。でもそれはあなたに託されたことだから、あなたが決めなよ。」


、、、。


そうなんだけどさ、、、


と言いかけて、やめた。



自分に与えられたことを、自分で考えて、自分で行動を起こす練習みたいのを、

大いなる何かが、私に与えているのだろうか?


「なんでも人に相談して、その人が導いた答えを

まるで自分の人生かのように進んではいけない。

自分で考えて、答えは自分で出しなさい。」



インドの旅に来てから、私はしばしばそのようなメッセージが何らかの形で受け取っていた。

まさしく、今回の出来事もそんなメッセージのひとつの様な、、、。


自分の思考と、ハートと、身体と、

すべて一致する答えを見つけるには、まだ時間が必要そう。



テントの中でうじうじしてる私の元へ、カンガルーが来た。

カンガルーはこのテントのお手伝いさんだ。

髪の毛にいつも寝癖がついてる小柄なおじちゃん。

なんだかんだといつも世話を焼いてくれるカンガルーは、両手にチャイを持っていた。


「ダンニャワード!」


まあ、チャイでもゆっくり飲んで、答えに導かれよう。


カンガルーはベッドに座ると、言った。

「 そろそろここのテント村はオフになる。 明日はオーナーがクーリー村へ帰るけど、君たちはどうする?」

?!


そうか、最近観光客が少ないと思っていたけれど、もうシーズンオフの季節なのか、、、。


「みんなはどうなるの?」

「音楽家たちはまた違うところで演奏するよ。僕らはみんなクーリー村に移動する。ここは閉鎖さ。」


「サンギータは?」

「彼女たちは多分、彼女たちの村に戻るだろう。」




「OK、、、」




そうか、、、そういう流れか、、、。




ここのキャラバンと、別れのときが近づいていているようだった。


私は彼と顏を見合わせた。


前からクーリー村へ行きたいねと話していた私たち。

わざわざ街から引き上げてきたこのタイミング。




「ちなみに、車の席は二人分空いてる?」



「YES!!」







ドン!






最後の夜を彩る砂漠の太鼓の音がひとつ、

新たなスタートを切るみたいに 私たちの身体を突き抜けた。







つづく
























































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