2011年02月23日
春風のにおい
とても暖かい日でしたね。
夜風もどこか 春の匂いがしました。
こういう季節の変わり目のときって
どうして懐かしい匂いがするんでしょうね。
この春の匂いは
一体どこから流れてくるのか、、、。
春に向けて準備を始めた植物たちからでしょうか?
雪がとけた、あたたかい土のような、
生まれたての赤ちゃんみたいなつぼみのような
そんな匂い。
今日は、なんだか特別な日でした。
うちの父は実家の一階で、約13年間
鍼灸あんまマッサージの治療院をやっていたのですが、
その大事な父が使っていた仕事道具を、
今日、引き取って頂きました。
父が亡くなってから、治療院にあった多くの物は
まったく使われることなく
そこに佇んでいました。
沢山の人を治療してきたベッドや、父がよく座っていた椅子
カルテの棚。。。
まだそこに、ニコニコした白衣を着た父がいるかのようで、
それらが無くなるというのは、やはり
こみ上げてくる熱い想いがありました。
「死ぬまで治療院はやめない」
そう言っていた父の姿を、時々ふと、思い出します。
自分が大腸がんで辛い身であるのにもかかわらず、
父は少しでも体の調子がよくなると
仕事をしたがりました。
父の復活を待っていてくれた患者さんが、
本当に沢山いらっしゃったので
父はいつも大事な患者さんのことを
気にしていました。
病気が分かって
初めて治療院を休まなくてはならなくなった時
父は本当に残念そうでした。
父は、体を治すだけではなくて、
心に元気と勇気を与えてくれる人でした。
何年も通ってくださっていた患者さんはみな、
父に話を聞いてもらうと安心すると言って
信頼して足を運んでくださっていました。
治療院を片付けていると、患者さんからの手作りのプレゼントも
出てきて、どれだけ父がここへ来てくださってる患者さんと
暖かい交流をしていたのかが、伝わってきました。
父が亡くなった時、
「俺が死んだら見てくれ」と言われていたファイルがあって、
そこには父からの遺言と病気が分かってからの日記が残されていました。
A4のノートに、大きな太いマジックで
二言三言。
目がほとんど見えなかったのに、
父の字は大きくたくましく書かれていました。
告別式について、お墓について、知らせて欲しい人について
遺品について、家について
それはとてもシンプルに、でも的確に書かれていたので、
残された私たちはそれを見て、みんなで協力して色んなことを
スムーズにこなすことが出来ました。
そしてその中に
「一年以内に、治療院のものを破棄してほしい」
と書いてありました。
「みんなの使いたいようにしていいからね。俺の残した物に縛られなくていい」
父らしいなと思いました。
治療院のものに関しては、身内では誰も使う人がいなかったので、
それを買った業者の人にただで引き取ってもらい、
欲しい人がいたら、ぜひその方へ。ということにしました。
なんだか、寂しい。
だけど、手放すということは、
また新しい何かが入ってくるということ。
春はもう すぐそこまできています。
手伝いに来てくれた兄が、帰りがけに
思いがけないことを言い出しました。
「そうそう、お父さん、治療院のどこかに、へそくりを隠したから
みんなで俺が死んだら宝探ししろやって言ってたんだよね。」
えーーー!
「でも俺探したんだけど、見つからなかった。どこに隠したんだろうなーー」
えーーー!!独り占めしようとしてたの?!笑
「お父さんらしいね。そんなお茶目なことするなんて」
母と兄と私とで、宝探しを始めましたが、中々出てこない。
「お父さん、どこに隠したのか教えてよー」と仏壇に声をかけながら
探し始めてしばらくして
カルテのボックスの間に、お財布を発見!!
開けてみると、、、
「あったーーー!!!」
でも、本当にこれがその正体なのかは謎。
へそくりをお財布にいれとくかな?
ただお財布に入れといたの忘れてたんじゃないか?!
謎はまだ解けませんが、
楽しませてくれたお父さんに感謝です。
ありがとう お父さん。
ゆっくり休んでね。